波のサイズについて

 今日ショップにいたら、まだサーフィンを始めて間もないあるサーファーがノーズを折ってしまったのでリペアして欲しいとやってきました。話を聞くと彼はやや上気した顔に目を輝かせて、今日はダブルだったと言います。今日の波は、昨日強く吹いたオンショアーででた波で、実は私も同じ時間に隣のポイントに入っていたので、そんなには大きくなかったのは知っていました。しかし彼は嘘ついたり話を誇張してしゃべる奴ではないのはいつもよく話して知っていたので、そうそんなにあったの?と言って、話題を変えました。彼は自分を大きく見せようと嘘を言ったわけではなく、本当に思ったままのサイズを私に言ったのです。
 ここで各地の波のサイズの言い方と、測り方の基準を比べてみたいと思います。日本では一般的に、最小は、くるぶし、大きくなるにつれてヒザ、コシ、ムネ、カタ、アタマ、オーバーヘッド、ダブル(オーバーヘッド)、トリプル(オーバーヘッド)などと言ったりしています。日本以外ではサイズはフィート(1フィート=約30センチ)単位です。だいたい前から見た高さをフィートで表すのが普通ですが、実際は、あとで写真などで見た高さより小さめのようです。つまり、前から見て乗っているサーファーと同じ高さの波は3、4フィートというように。この測り方はオーストラリアをはじめUSAやヨーロッパでも同じような基準のようで、これは見ている人でもサイズを言うことができます。しかしハワイではちょっと違っていて波を後ろから見て測っています。そのためポイントによっては、岸から見た高さとはかなり違っていて、そのポイントによって独特のサイズの言い方があります。もともとハワイは波の厚みと押し寄せるスピードが他とは段違いですので最初は混乱してしまいます。何年か通ってローカル達の感覚に慣れ、彼らの基準を知らなければなりません。しかしこの慣れるということは実はとても大変なことなのです。
 話を冒頭のサーファーの話に戻しましょう。彼は本当に心からダブルだと思い(つまり前から見て人の身長×2)そう言いました。しかし、彼が何年か経験を積んで同じようなサイズの日に同じ場所でサーフィンをした時、果たして同じようにやはりダブルだと言うでしょうか?たぶん今日私が思ったサイズと同じようにアタマとかオーバーヘッドとかと言うと思います。つまりその大きさの波に慣れてきて、もっと冷静に判断できるようになっているからです。よく長くサーフィンを続けているサーファーが、昔はもっと波が大きかったとか、今は波の立つ日が少ないとかと思うのはそういうことがかなり影響しているのかもしれません。
 近年、マウイのJOWSというポイントやサンセットの遥か沖のリーフでジェリーロペスやデリックダーナー、レイヤードハミルトン、バジーカーボックスなどというビッグネームのサーファーがジェットスキーのヘルプで25、30フィートという波でサーフィンしていますが、その25フィートというのはいったいどのくらいな波なのでしょうか?私はこの2月、ワイメアが20から30フィート(これも本当のサイズはわからない。ワイメアで経験を積んでいるサーファーに聞いたわけではない。インターネットの SURF/WIND FORECAST:NORTHSHORE HAWAII にでていた数字 http://www.soest.hawaii.edu/soest/surf/caldwell.html)という日にワイメアから数キロ離れたヒマラヤというポイントに初めて入ったのだけれども、ここがピークだと思って波待ちしていた所が、実はピークから遥か手前のインサイド(それでもパイプやサンセットの12フィートよりかなり大きく感じた。)で、なんとピークはそこの3倍の大きさは有りそうでした。もうここまでくると誰もサイズなんて分からないし、そんなことはどうでもいいことだと思いました。とうとうそのピークには近ずけずじまいでしたが、もしそこに行ったとしたら、私はきっと40フィートはあったよ。と、人に言ったかもしれません。
 ですから、今日の波をダブルと言った彼はある意味では間違ってはいないと思います。彼は彼なりのサイズなのです。皆さん、今日の波はどうだった?と友人に聞かれたら何と答えますか?


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